旧東ヨーロッパの教会と信者は今162

チェルノクリミア共和国

ユーラシア大陸にあるクリミア半島は、日本列島と比較すると四国より大きく九州より小さい面積です。歴史は非常に古く紀元前5世紀にまでさかのぼります。土地は肥沃で農産物、海塩、鉄鉱石等に恵まれ、陸上および海中の両方にガス田もあります。ガス田はウクライナのパイプラインに接続され、西側の石油・ガス会社によって開発されました。2014年のウクライナ国民調査によれば、人口235万3千100人でロシア人が58.5%、ウクライナ人24%、クリミア・タタール人10.2%、そしてドイツ人、ユダヤ人等がいました。宗教的には正教とイスラム教支配が繰り返され、戦いが続いてきました。近年では2014年、ロシアによるクリミア半島の突然の併合宣言がありました。それに対してウクライナはじめ国際社会、ヨーロッパ連合等は併合を認めない態度をとり、政治的緊張状態が現在も続いています。しかし100年以上前から、キリストの福音派の教会は建てられ、キリストの福音が語り伝えられてきました。最近は政治的緊張が続く中、そしてコロナ禍で全島ロックダウンにもかかわらず、キリストの福音は大胆に宣べ伝えられています。ここに現地のイゴール伝道師から、最近のクリミア半島でのキリスト教会を紹介してもらいます。

クリミア半島のキリスト教会


バヒスチャラヤ市に教会が建てられたのは、1910年でした。教会はバプテスト派とモロカナ派で、迫害と混乱の中にあってもキリストの福音を宣べ伝えてきました。とくに共産主義時代はキリスト信仰と宣教が禁じられましたが、神は先輩聖徒たちを守り数多くのみわざをなされました。神がお許しくださるならば、今秋に宣教111周年記念礼拝を持つ予定です。宣教と聖徒たちの交わりの中心である会堂は、111年の歴史を経てすでに老朽化しました。壁のひび割れ、天井からの雨漏り、それに床も腐り不安定となってきました。会堂は旧市街にあり小さく来会者でいっぱいでした。夏場は中庭にも人が立ち、集会を進めてきました。

このような状況下で、私たちは大きな会堂を必要としていたところ、神はその必要をよくご存知でした。ドイツの主にある聖徒たちの心を動かしてくださり、会堂建設への道を開いてくださいました。主の導きであれば、今夏には会堂建設を終了させ、秋には宣教111周年記念礼拝を新会堂で持つ予定です。そして共産主義時代でも倒れることがなかった信仰を、町中の人々に宣べ伝えたいと祈っています。

イゴール伝道師家族

弱者への働きが祝福へ

20年前に、私たち夫婦に長男が生まれましたが、生まれながら重い障害を持っていました。このことは私たち夫婦にとって、また教会奉仕にとって大きな変化をもたらしました。障害児を抱える親として、私たちはハンディーがある方々と、その両親と親密な交わりを持つようになりました。それによって私たちの奉仕活動は社会の弱者に向かい、彼らに人道上の支援をし、生ける神を宣べ伝えるように導かれました。そして多くの障害者とその家族が心を開いてくださり、イエス・キリストを救い主として信じ受け入れるようになりました。

エルミラの家

神は障害者への働きを通して、霊的な実を結ばせてくださいました。今年に入りエルミラとグルナナラがキリストへの信仰を告白し、まもなく洗礼をうける予定です。エルミラは2014年以来、私たちが知っている婦人です。彼女の子どもも障害児で、身障者キャンプに参加しました。彼女自身は夫を失った未亡人で、一人で3人の子どもを育てています。それに次男は小児麻痺を患っています。しかし、自力歩行は可能です。その彼女が初めて福音を聞いたのは、身障者キャンプの小グループでの交わりの時でした。その時、ボランティア・ヘルパーが次男の面倒を見ていましたので、エルミラにとってキャンプは単に物理的解放だけでなく、精神的休息の時でした。彼女は真理について真剣に尋ね求めてきました。夕方には、賛美があり聖書からメッセージが語られました、それは彼女の心に蒔かれたはじめの種でした。

キャンプ終了後も、彼女は3人の子育てと仕事をしながら、できるかぎり集会に参加するようになりました。それは本当に大変なことでしたので、私たちも彼女をできるかぎり助け集会に誘いました。そして彼女はキリストを救い主と信じ救われました。彼女の家は老朽化し修理が必要でしたので、教会の兄弟たちは無償で協力し改装工事を行いました。エルミラの親族はムスリムでクリミア人ですが、彼らに非常に幸いな証しとなりました。隣人愛の実践は言葉を超えた伝道となりました。「このように、あなたがたの光を人々の前で輝かせなさい。人々があなたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようになるためです。」(マタイ5:16)このようにクリミア半島での伝道は、政治的緊張がつづき混迷の中にありますが前進しています。お祈りください。

イゴール伝道師と身障者たち

(つづく)