タジキスタン共和国

黒田禎一郎

遊牧民の国と呼ばれるタジキスタンは、かつては旧ソ連邦に属していました。しかしソ連崩壊後独立しCIS(独立国家共同体)に属する共和国です。国土の半数が標高3000メートル以上の山岳地帯で、そこに人口約9千120万人の人々が住んでいます。言語はタジク語ですが、ロシア語が共通語として使われています。宗教は国民の85%がスンナ派ムスリム、5%がシーア派ムスリムです。しかしそこにもイエス・キリストを信じる聖徒たちとキリストの教会があります。現在のタジキスタンでは、多くの人々が経済的苦難の中で苦しみと飢えとの戦いにあります。そこでドイツの宣教団体「フリーデンズ・ボーテ」は、クリスチャンのパン屋をサポートし伝道活動を行なっています。次はそのレポートです。

肉のパンからいのちのパンへ

パンを手にし喜ぶ母子

私たちの「パン・ミニストリー」はオープンして、早くも12ヶ月が経ちました。タジキスタン北部でのパン・ミニストリーは、光陰矢の如しという格言のように、非常に速い速度で進んでいます。これまで半径200キロメートルの広範囲に、一万斤以上のパンを配布することができました。この働きの背後には、多くの方々の祈りと捧げ物があることを覚え感謝しています。私たちはタジキスタン北部全域のキリスト教会に、パン・ミニストリーの働きを進めています。キリスト教徒のパン屋では、毎週約 300斤のパンを焼いています。そして焼き立てのパンを、パッケージ化し、キリスト教会を通して社会で恵まれない家族に配布しています。

 タジキスタンはイスラム教が圧倒的支配する国ですが、神はパン・ミニストリーを通して閉ざされて扉を開いてくださっています。そして単に日々の糧だけでなく、命のパンであるイエス・キリストを人々に伝えています。わずか一斤のパンが、人々の生活を変えたという「証し」が届けられています。非常な困難の中で、聖書の神を知らないムスリムがパン・ミニストリーを通して希望を持ち始め、人生で最も困難な時期に聖書の神が見守ってくださっていることを感謝しています。

貧しい人のためのパン

パンを手にするマディナ年金受給者

66歳のマディナは年金受給者で、毎月約14ユーロ(約2,310円)の年金しか受け取っています。それは生き残るためにギリギリの金額です。彼女は自分の家がなく、結婚もしておらず、子どももいません。遠い親戚は彼女に小さな小屋を与えただけで、彼女は今そこに住んでいます。彼女にはこのわずかな年金以外には収入はありません。「普段の生活の一部」と思われる日々の糧は、彼女にとって贅沢なものです。彼女は毎週私たちからパンを受け取っています。この肉のパンにより彼女は飢えから救われています。マディナはこの肉のパンを通して、近くのクリスチャン家庭で開かれている家庭集会に集うようになりました。彼女の心の関心は、聖書の神に向かい高まっています。神が彼女の心の中で働き、キリストを受け入れる準備をしてくださっているのは明らかです。何という幸いではないでしょうか。

孤独な人のためのパン

すでに高齢者であるアジズには、親戚は誰もいません。彼はとても孤独で、通りすがりの人から与えられるものだけを頼りに生きています。ある日、彼は突然私たちの教会の戸口に立ち、「いと高き方の御名において、何か食べ物をください」と尋ねてきました。それが私たちの最初の出会いでした。彼はお腹いっぱい食べました。そこで、私たちは彼に食べ物のパッケージを与えました。それ以来、私たちは彼に温かい食べ物を与えようと努めています。また私たちは、パンを与える機会を与えてくださった神に感謝しています。私たちが愛を持って彼に対処したことに、彼はとても幸せを感じ感謝してくれています。彼はそのような中で、今では福音に心を開いてくれています。そしてイエス・キリストの福音に耳を傾けるだけでなく質問もし、1ヶ月以上も教会の礼拝に出席しています。愛と思いやりがアジズの孤独な心に神への「架け橋」となり、彼にキリストの福音を届けようとしています。

羊飼いのためのパン

羊飼いの少年アリッシャー

アリッシャーは私たちのパン製造工場から東へ、約200キロメートルのキルギス国境に近い、人口わずか数百人の村に住んでいます。彼の父親はセメント工場で働いており、その賃金だけでは生活に十分ではないため、羊は育てており、アリッシャーはその世話をしています。彼は毎日学校から帰宅すると羊たちを山の牧草地に導き、夕方遅くまで帰宅しません。しかし、アリッシャーは毎週日曜日に教会に来ます。父親が仕事をしているときでも、彼は一人で神の言葉を聞きに来ます。私たちは毎回彼にパンを与え、彼はそれを家に持ち帰っています。彼はこの贈り物に大変満足し、いつもこう言っています。「パンを焼き、私や私の家族のように困っている人たちを助けるために、神が備えてくださった人々に感謝します!」 イエスは次のように言われました。

 

わたしがいのちのパンです。わたしのもとに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者はどんなときにも、決して渇くことがありません。(ヨハネの福音書 6章35 節)

(つづく)

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