1970年代の旧ソ連

しかし、神のことばはつながれていません。

(テモテへの手紙 第二 2章9b節)

クリスチャンへの迫害

黒田禎一郎

1970年代、西側世界はソ連で迫害を受けたクリスチャンに関する情報に、関心を示すようになりました。その理由は「鉄のカーテン」下で、西側に逃れたドイツ系のクリスチャンたちが、キリスト信仰のゆえに迫害を受け、耐え抜いた苦難について生々しい証言をしたからです。それは神の深いご摂理でした。神への礼拝やバプテスマは、公にはできず秘密裏に行われなければなりませんでした。路上で他の人々とイエス・キリストについて話すだけで、もう逮捕理由となったことがありました。当時の無神論者と全体主義指導者にとっては、クリスチャン家庭で、聖書や他のキリスト教文書が発見されると問題になりました。クリスチャンたちはその結果、長期にわたり懲役刑、拷問、その他の苦難を受けました。しかし彼らは迫害がどれほど大きくても、「神のことばはつながれてはいません。」という事実を証ししてくれました。

強制労働を強いられる婦人刑務所

聖書が禁止されたら

国が神の書である聖書を認めず禁じるならば、どうすれば良いでしょうか。クリスチャンは可能な限り、あらゆる方法で神のことばを語り伝え続けました。彼らは神のことばを伝えるために、秘密の印刷機を作り印刷しました。ある聖徒たちは福音書を手書きで書き写し、聖書を章ごとに暗誦しました。さらにクリスチャンが収容された刑務所内に、霊のパンである聖書を持ち込みました。それによって看守や兵士たちが、イエス・キリストを信じるようになりました。きびしい軍隊の中で、秘密警察の目から聖書を隠すことはほとんど不可能に近いことでした。しかし神は不思議な手段と方法をお持ちでした。

手中に入るミニ聖書

1917年のロシア革命以前から、クリスチャンたちは「ミニ福音書」を秘密に印刷してきました。ミニ福音書は西洋の最新技術を使い、マッチ箱サイズの小さい福音書を印刷することができました。ミニ聖書が印刷され配布されたことによって、聖書が人目に目立たなくなりました。つまり、福音書を簡単に隠すことができました。たとえば、自動車部品などの箱に入れて旧ソ連内に運びました。無神論者やクリスチャンを嫌う当時の人々は、そのようなことが可能だとは考えも及ばないことでした。

ミニ福音書の特徴

コップ水に入れても大丈夫のミニ聖書

そのミニ福音書の特徴は、単に小型だけではありません。当時の技術で画期的なことは、ページが紙ではなくプラスチック製であることです。それによって、福音書を湿った場所、水槽、さらには沸騰するほどスープの中に何週間も隠せるという利点がありました。それまでは紙が湿気を吸収しないよう、常に湿気がない安全な場所を探す必要がありました。プラスチック紙は、摂氏マイナス20度まで弾力性を保つため、土や雪に埋めても霜が降りても害はありません。その他の利点としては、プラスチック紙はネズミに食べられなくなったことがあります。また可燃性が低くサイズが小さいため、囚人がプラスチック紙を見つけても紙巻きタバコ用に巻き取ることができなくなったことが挙げられます。ページの強度と耐久性が向上したため、鉄のカーテン内への輸送中に聖書をアクセスしにくい場所に保管しました。これらは全て神が与えてくださった知恵でした。

迫害を受けるキリスト者のために

それから何年もの月日が経ち、大国を誇った旧ソ連はとうの昔に消滅しました。しかしながら、今日もクリスチャンは信仰を理由に迫害や嫌がらせを受けています。今の時代、世界各地においてクリスチャンへの迫害は、再び増加していることが実情です。特にイスラム教諸国では、多くのクリスチャンが主イエスへの信仰を公に告白できません。彼らは毎日のように屈辱、殴打、暴力などを身に受けています。中には命の代償を払う聖徒もいます。愛する皆様、この事実を忘れず覚えてください。迫害を受けているクリスチャンのために、ぜひ毎日祈り続けてください。中央アジア諸国、中東諸国においては程度の差はありますが、キリストの教会とクリスチャンは迫害を受ける対象となっています。

お祈りください

羊飼いの少年アリッシャー

これらのミニ福音書は、世界中のクリスチャンが今日も信仰のために払う高い代償を私たちに思い出してくれます。ミニ聖書の存在は迫害を受けているクリスチャンと、その家族を覚える必要を提示しています。どうぞ主にあって、熱い祈りを持ってご支援ください。神のことばが、このようにして地球の最も暗い隅々まで届き続けますように。そしてイエス・キリストの福音が届けられますように。さらにミニ聖書を通して真の信仰に導かれますように、続けてお祈りをお願いします。

(つづく)

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