ミラノ賛美教会牧師

内村 伸之

危機の時代の宣教

神の視点で世界を見る

前号で、21年働いてきた宣教地イタリアを離れ、半年間のサバティカルを頂きながら、母国日本で主の前に静まり、世界を見つめていることを書きました。そのような中で、主から「あなたはこれからも【平和をつくる者】として生き、私に従いなさい。」という言葉を頂いています。そこで、日本では報道が減っていますが、今なお続くロシアによるウクライナ侵攻と、戦禍における教会の【平和をつくる働き】と【欧州の教会のこれから】についてお分かちさせていただきます。

戦禍における教会の「平和をつくる働き」

2022年2月24日にロシアによるウクライナ侵攻がはじまり、その二週間後にはミラノ賛美教会から派遣され、物資と献金を携えウクライナ国内の教会支援にあたりました。この当時、深刻な問題となっていたのは、ロシアからの攻撃が激しい北部と東部から逃げてきた人々が、戦闘の少ないウクライナ西部に集っているということでした。この時にベレホヴェというウクライナ西部の町で牧会されている、ヴァレンティン牧師と初めで出会いましたが、昔から知っている友人と再会したような不思議な印象を持ちました。

 私がミラノから運んだ物資を、教会のスタッフ達と一緒にストレージに運び込む時に、彼は救援物資を手にして次のように言いました。「この荷物の一つ一つに、ミラノの教会とその背後にある日本の教会の愛と祈りがあることを感じる。」彼はこのとき、教会の礼拝堂を食堂にして、戦闘地域から逃げてきた人々に1日3食、温かな食事を提供し、毎晩、礼拝堂で伝道礼拝を捧げ、福音を伝えていました。ヴァレンティン牧師は、私に、伝道礼拝でメッセージを語って欲しいと依頼をしてきました。「英語でメッセージをしてください、そうすれば私がウクライナ語に通訳します。」ヴァレンティン牧師は「今は終わりの時代だから、教会は福音を語る必要がある。」と言うのです。そこで、私は英語でメッセージを取り次ぐことを決めました。

左から内村、ヴァレンティン牧師、船越宣教師

その時、とても不思議なことが起こったのです。 礼拝開始5分前に一人の日本人宣教師が現われました。彼は船越真人という宣教師で、戦闘が激しくなったオデーサから教会メンバー達と一緒に近くの村へ避難していました。そこで、いつものように私は思いっきり日本語でメッセージを取り次ぎ、船越宣教師が完璧なロシア語に、聖霊によって一つとなり通訳してくださりました。このように、宣教というのは「出会いの恵み」によって進められていくことを、この時も実感しました。 今もウクライナで続いていることは、報道や国際政治の視点からは「武力の戦い」ですが、戦地に置かれた教会のリーダー達は「今、起きていることは『霊の戦い』だ。」と言います。

聖書を求める避難民達

2022年の夏には、ウクライナ西部に疎開していた船越宣教師ご夫妻や教会のメンバー達は、再び激戦地のオデーサに戻り、今もヘルソン州やミコライウ州といった、激しいロシアからの攻撃が続く地に赴き、そこに置かれている教会を後方から援助しています。私たちも、その後何度も同行させていただき、オデーサの教会の人々と共に礼拝を捧げてきました。不思議なことですが、侵略戦争という悲惨な現状は悪化を辿っているのに、戦禍の中で捧げられる礼拝は、驚くほど神の臨在を感じます。人々は本当に真剣に御言葉を求め、涙を流していました。砲撃の危険があっても、人々が互いに愛し合うこと、そして祈り、賛美を捧げることを誰も止めることはできないということを垣間見ます。

欧州と日本の教会のこれから

 2022年の秋にドイツで行われた在欧教会牧師会に、ウクライナから船越宣教師ご夫妻をお招きしました。その後、2023年、2024年と続けて、夏の「ヨーロッパキリスト者の集い」にも船越宣教師ご夫妻をお招きして「ウクライナの戦禍における教会の、平和をつくる働き」を報告していただいています。このことにより、在欧教会やクリスチャンの間に霊的な覚醒がおこり、皆が祈りで繋がり、宣教が進んでいます。この危機の時代、すでに世に勝利されたキリストのことばに従い、なすべき事をする私たちとさせて頂きたいと願っています。

(つづく)


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