ミュンヘン日本語キリスト教会 宣教師

井野 葉由美

ヨーロッパの現状と外国人教会

 2年前にも、2か月にわたって、ミュンヘン日本語キリスト教会の成り立ちと現状、オンライン礼拝による、国を超えた働き、今後のヴィジョンなどについて、書かせていただきました。海外日本語教会のページではありますが、日本語教会だけでなく、ヨーロッパ全体の状況なども踏まえて、海外に住む者の視点でレポートさせていただきたいと思います。

以前にも書いたことですが、日本では、「ヨーロッパはキリスト教の国」と思われていますが、現状は、「宣教師を必要とする国」になっています。確かに文化としては根付いており、至る所に教会があります。ミュンヘン中心の歩行者天国を歩いていると、100mごとに大きなカトリック教会がありますし、各村落の中心には、必ず高い塔を持つ教会が建っています。しかし近年、カトリックでもプロテスタントでも聖職者による未成年に対する性的虐待が明るみに出たことにより拍車がかかり、教会を脱退する人が後を絶ちません。「私はクリスチャンです。」という人でも、普段は礼拝に行かず、聖書も読まず、キリストと関係を持たずに生活している人が多いです。そればかりか、牧師が「聖書は昔の出来事だから、今の時代には合わない。そういう箇所は信じなくてもいい。」と教えていたりします。そのようなメッセージを聴く人々は、私たちの生活に実際に介入される神を経験せずに、過ごしています。

クリスマス祝会(2023年)

ドイツ人にキリストを伝える

かつて日本は、欧州やアメリカからの熱心な宣教師たちによって、イエス・キリストを伝えていただきました。昨年、私が卒業した神学校の学院長が、お世話になった北欧の国々を訪ねたところ、「夏休みだから」と、聖日の礼拝もお休みだったそうです。「ヨーロッパの霊的状態が衰退しているとは聞いていたけれども、ここまでだったとは!」と驚いておられました。

そのようなヨーロッパ、またドイツですが、そこに生活する移民たちの教会は、どんどん増えており、成長しています。以前は、自分たちの母国の文化と言語のみで集まっていましたが、彼らの多くは、その地に住み着いているので、ドイツ語が堪能な方も多くいます。また、第2世代、第3世代となってくるに従い、ドイツで生まれ育っているため、文化的にもドイツ人としてのアイデンティティーを持つようになる方もいます。そういう背景のもと、外国人教会がインターナショナル化している傾向があります。実際にドイツ語しか理解できない子どもたちに信仰を継承していくには、ドイツ語での対応が必要になるのです。近年は、そういう外国人教会が、自国の人々で集まるだけでなく、他の教会とも協力して、ドイツ人にもキリストを伝えて行こうという動きがあります。

グローバル化する教会

 ミュンヘン日本語教会には、奥様が日本人であるドイツ人男性2名が集っていますが、最近ウクライナ人の女性がお友だちに誘われて、礼拝に集われるようになりました。彼女は難民としてドイツに来ており、息子さんは、ウクライナの外に出ることができないので、ウクライナに留まっています。彼女自身はカトリックですが、一度日本語教会の礼拝に来られて以来、居心地の良さを感じてか、毎週来られています。彼らのためには、メッセージをドイツ語に翻訳して、毎週お渡しするようにしています。外国人教会は、普段の生活から助け合っていることが多く、家族的な交わりがあります。以前ハンブルクにいた時も、ドイツ人のご主人が「日本語教会は、ドイツの教会と雰囲気が違う。みんながお互いのことをよく知っていて、神がそこにいる気がする。」と言われました。小さい教会だからこその利点があり、日本人だけでなく、ドイツ人やそこに住む方々にインパクトを与えていける可能性があります。

ミュンヘン日本語キリスト教会は現在15名ほどで礼拝していますが、常に人の入れ替わりがあります。人数が少ないので、礼拝に来られる人は、すぐ奉仕者です。最近来られた若者は、「日本の母教会だったら、礼拝の司会は執事だけが担当していたので、自分がやるなんて、絶対に機会が無かった。やらせてもらえて、嬉しいです。」と言っていました。自分が教会の一員として、形作られていくこと、奉仕をすることで、早く成長できることも、海外日本語教会の恵みです。小さい教会でも、ずっとメンバーが変わらなかったら、奉仕をする人も決まって来るでしょう。若者たちが教会を担うメンバーとなり、成長して、日本に帰ることができれば、日本の教会にとっても祝福となります。

(つづく)

インターナショナル教会と合同礼拝


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