ドイツ

 アンゲラ・メルケル元首相は、昨年末「自由」という表題で自叙伝を出版しました(注:日本でも出版)。CDU(キリスト教民主同盟)の政治家であったメルケル元首相は、2005年から2021年まで4度の選挙に勝利し、ドイツ国首相を16年間務めました。旧東独で生まれ育った彼女はその中で、牧師家庭での生活について記しました。

 次は自叙伝中のほんの一部のエピソードです。私の両親、特に父は私たち子どもたちにパイオニア(青年共産党員)に​​なることを許可してくれました。父は政治的には左翼で、ラテンアメリカにおける解放神学を支持し、連邦共和国での教会税を拒否していました。その理由は、牧師は自分の教会(会衆)で支えられるべきだという意見を持っていたからです。東ドイツ時代、父は「赤い兵舎」と呼ばれていました。「クリスマス・イブ」には、父はテンプリン周辺の村で 2 つまたは 3 つの「クリスマス礼拝」の司式をしなければなりませんでした。帰宅するのは午後 6 時以降になったことが多く、寒村の教会から奉仕を終えて帰宅したことを覚えています。私たちにとってクリスマスの意味は、楽しい時間というより、見捨てられた孤独な人々のことを覚える時でした。そこで両親は「クリスマス・イブ」には、一人暮らしで寂しく何の楽しみも持たないような人たちを自宅に招待していました。

 私は教会地区にある他の牧師館に行くのが、大好きでした。コーヒーを飲んだ後、私たち子どもたちはよく送り返されました。しかし私はしばしば大人と一緒に居ようとし、気づかれないように部屋の隅やカーテンの後ろに隠れたりして大人たちの会話を盗み聞きしていました。会話内容はほとんど政治的なものでしたが、私は非常に興味を持ちました。それは神学的問題やキリスト教の教義や礼拝について議論されるよりも、はるかに興味深かいものでした。時には、国家と対立するような話や、他の牧師たちが関係する国家安全に関する話題、さらに子どもたちの学校教育等についても話がありました。そのような会話や出会いについて、私たちは第三者と話し合うことは決してできませんでした。私たち子どもは、ただ黙っていなければなりませんでした。とメルケル元首相は、自叙伝で子ども時代の思い出を回想しています。

消火活動に来た消防士たち

 12月9日夜、左翼過激派がブレーメン福音自由キリスト教会(ペンテコステ派)の社会事業所に、放火事件を起こしました。実行犯らは、社会福祉行政が置かれているブルク・グランブケ地区の旧警察庁舎裏にあった粗大廃棄物の山に放火しました。ソーシャルワークの広報担当者ニコラ・ミュラー氏は、火災によりオフィスが全焼したと報告しました。幸いなことに火災は建物全体には燃えませんでした。引き起こされる被害はまだ予測できませんが、警察は被害額を見積もった結果約2万ユーロであると推測しています。急進左翼インターネット・プラットフォーム「インディ・メディア」に掲載された犯行声明の中で、実行犯容疑者らは、今回の攻撃は「ビュレンヴァッヘ」だけでなく「ドイツ最大の福音主義社会組織」も標的にしたと述べています。 彼らの主張は、「ペンテコステ派」は中絶と同性愛を拒否し、それによってとりわけ女性の自己決定を制限していると言います。そして彼らの「聖書の文字通りの解釈」は、「同性愛嫌悪と同性愛者に対する敵意の源」であると述べています。左翼過激派からの手紙は「福音派はブレーメンの勢力であり、過小評価すべきではない。彼らの影響力は本質的に政治的なものでもある。また、選挙結果が右翼政党に不均衡な地区には多数の福音主義団体も存在する。」、と述べています。ブレーメン福音自由キリスト教会の社会事業部は、約700人の従業員をかかえ、子ども、青年、高齢者、精神障害者、障害者をケアする社会施設を運営しています。今後、ソーシャル・ワークどうすべきかが求められています。どうぞ、お祈りください。


ロシア

「フォーラム18」(オスロ)と援助団体「AVC–迫害されたキリスト教徒と困窮者のための行動」(ニッダ/中央ヘッセン)の発表によれば、昨年10月17日ニコライ・ロマニュク牧師(62)はモスクワ近郊のアパートで逮捕されました。

 ロシア当局は、ペンテコステ派の牧師が「国家の安全に反する」行為をしたと主張しています。2022年9月、彼は説教でロシア軍のウクライナ侵略を非難し、この戦争をするべきではないと訴えました。彼には9人の子どもがいます。

 ロマニュク牧師は、当局から自宅と教会の部屋と敷地内を捜索され逮捕されました。その際、彼は警官がアパートを捜索している間、何時間も床にうつぶせに寝させられ、繰り返し激しく殴られました。その後、息子が刑務所で父親と面会した時、ロマニュク牧師は虐待によって片耳が聞こえなくなっていました。

 ロマニュク牧師は獄中から教会と友人に宛てに手紙を書き、次のように述べました。「主が私を送られた独房は、私の祈りの部屋です。部屋の中は暖かく、一日三回食事が与えられ、その上毎日少なくとも一時間は新鮮な空気を吸うことができます。」彼は自分の状況を神のご計画であると説明し、決して大げさにしないでほしいと書きました。彼は「信仰のために困難を受けなければならなくても、何も後悔していないとも述べていますさらに彼は、手紙の読者に対し世のさまざまな潮流や教えに惑わされず、ただ神の福音の教えに従うよう呼びかけていました。人口1億4千300万人の約79%はロシア正教徒です。プロテスタント信者は約2.3%と言われます。どうぞ、ロマニュク牧師とロシアの教会のためにお祈りをお願いします。

 

トルコ

イスマイル・クラクチュオール牧師

 トルコ北西部の都市ブルサで、歴史ある「フランス人教会」の立ち退きを当局から命じられました。表向きの理由は、耐震化する必要があるというものです。このプロテスタント教会は現在、法廷での判決に対して自らを守られなければなりません。ブルサ教会のイスマイル・クラクチュオール牧師は、歴史ある教会から昨年8月26日までに退去するよう命じられました。その際の当局の主張は、「地下水位が高く、液状化の危険性がある断層上に教会堂は位置し危険である」ということでした。しかし、クラクチュオール牧師は地質学者の報告書は誤りであると主張し、彼は報告書とともに、立ち退き通知を取り消すよう求めました。どうぞ、お祈りください。

ブルサのフランス人教会

北朝鮮

 国際人権委員会(IGFM)とキリスト教出版社(IDEA)は、2025年1月の「囚われ人」としてクリスチャンのチェ・チュンギル氏(65)を挙げました。 韓国人である彼は、2014年12月4日に逮捕されました。彼と共にキム・クギ長老派教会牧師(70)も逮捕されていました。キム・クギ牧師は、すでに2020年6月の「囚われ人」として挙げられていました。彼は中国の港湾都市ダン国境近くで、韓国特務機関のスパイ容疑で告発されました。彼らは北朝鮮に対する中傷キャンペーンにも参加していました。  

チェ・チュンギル氏

ビジネスマンで宣教師のチェ・チュンギル氏は、キリスト教書籍と人道支援物資を北朝鮮に届けていました。2015年5月、北朝鮮当局はチェ・チュンギル氏とキム・クギ牧師を平壌で記者会見させ、世界に向けてプレゼンテーションを行いました。同年6月23日、北朝鮮最高裁判所は両被告に強制労働収容所への無期懲役を言い渡しました。 IGFMとIDEAは、北朝鮮の独裁者金正恩氏に両キリスト教徒の即時解放を求め、書簡を提出するよう訴えています。北朝鮮は、国際宣教団体「オープン・ドアーズ」の世界迫害指数では、第1位にランクされています。キリスト教徒がこれほど厳しく迫害されている国は、世界中に他にありません。どうぞ、お祈りください。

シリア

アサド政権崩壊を喜ぶシリア難民(独エッセン)

 シリアのバシャール・アル・アサド政権崩壊後、国内の多くの地域の状況は管理不能状態となっています。イスラム主義者が率いる反政府同盟は、12月8日にダマスカスで政権を奪取しました。独裁者アサド大統領は、家族とともにロシアへ亡命しました。シリアでは2011年以来、50万人もの命が失われました。「脅迫された人々のための協会」(ドイツ・ゲッティンゲン)は、将来に懸念の目を向けています。中東コンサルタント、カマル・シド氏も、「現在権力を掌握しようとしているイスラム主義者たちは、復讐するか、最終的にはシリアにイスラム国家を樹立することを考えているからだ」語っています。多くのシリア人は、「イスラム主義は、決して良いことをもたらさなかった」ことを知っています。

 ダマスカスのマリオ・ゼナリ枢機卿は、慎重ながらも楽観的な見方を表明しました。同氏はバチカン・ニュースに次のように語りました。「権力を握った人々は、すべての人を尊重すると約束しましたが、アレッポでの道はまだ険しいです。」

キリスト教徒は今も生きており、反乱軍はすでに司教たちと面会しました。彼らはさまざまな宗教宗派を尊重、保証すると述べています。  ACNインターナショナルのレジーナ・リンチ執行会長は、国際社会とシリアの新統治者の双方に対し、すべての宗教共同体の基本的権利と教育の自由の保護を確保するよう呼び掛けました。平和に暮らせる権利を保証し、宗教的少数派が尊敬されることは重要だと語っています。

 ACNインターナショナルのレジーナ・リンチ執行会長は、国際社会とシリアの新統治者の双方に対し、すべての宗教共同体の基本的権利と教育の自由の保護を確保するよう呼び掛けました。平和に暮らせる権利を保証し、宗教的少数派が尊敬されることは重要だと語っています。

独裁者アサドの写真を踏みつける男性

必要は大きい

 世界的支援団体である「ワールド・ビジョン」は、シリア支援を始めました。多くの必要がある中で、まず健康を保持することを最優先課題として挙げています。特にシリア北部の貧困地位域の多くの人々は、蟻の巣のようなスラム街に住んでいますので支援が急務です。国際人権団体「カリタス」も人道上、衛生上の観点から支援を表明しています。「カリタス・インターナショナル」代表のオリヴァー・ミュラー氏は、「必要は限りなく大きい」と語っています。特にイディプ地方の必要が大きいと言います。これまでシリア難民を受け入れてきたドイツのアナレェナ・ベアボック外務大臣は、アサド政権崩壊を受けて、難民受け入れを停止したと発表しました。どうぞ、お祈りください。

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