どんなたましいも諦めない愛

一人のたましいが悔い改め、イエス・キリストを人生に迎えることは、天でも地でも歓喜が湧き上がります。誰かの救いのために私たちは信仰を持って祈り続けますが、もう一方では、ある人の救いは不可能だと決めつけ、 祈りさえせずに諦めてはいないでしょうか。イエス様が宣教中に救われた人々の中で、悪霊に取りつかれ、誰にも助けてもらえず、放置され続けたあわれな人がいました。そのゲラサ人の男性と同じように、自らを傷つけ破壊的な生き方しかできずに、もがいていた一人の男性の再生ストーリーがここにあります。

神ラブルメーカー

チョウ・ドンヒョクが生まれた1970年代の北朝鮮は、金正日がその父、 金日成主席の後継者として頭角を表した頃でした。彼の父は金日成統治下で、党と首領に忠誠を尽くし、地位を高めました。ところが、金正日が次期最高指導者としての地位を確立させると、金正日の取巻きたちから父はその地位も職も全て奪われ、一家は田舎の鉱山へと送られました。苦しい生活を強いられ、酒に溺れた父でしたが、子どもたちを厳しく育て、教育を受けさせ、ドンヒョクは工業大学まで進むことができました。ドンヒョクは幼い頃から負けず嫌いの性格で、何かと反抗心を露わにし、やがて党組織でも、誰も彼を統制することはできないほどのトラブルメーカーとなりました。 

ドンヒョク青年期の1990年代は、金日成が崩御し北朝鮮国内は飢餓地帯となった頃でした。その頃、彼は頻繁に中国に出入りするようになりました。中国で韓流の影響を受けた彼は、韓国のあらゆる文物を北朝鮮に持ち込び、それらを盛んに広めました。そんなドンヒョクが中国で、一人の韓国系宣教師に出会いました。その宣教師たちが宣伝する神を信じた彼は、信仰の道に入りました。 ところが、彼らは異端者たちであり、ドンヒョクは彼らからの裏切りに失望し、神から目を逸らす道を選んでいきました。やがて彼は様々な違法行為を行い中国公安に捕まり、北朝鮮でも逮捕され、長い服役生活を余儀なくされました。

跳ね馬

懲役を終えたドンヒョクが40代となった2011年に、金王朝は3代世襲を続け、金正恩が北朝鮮に君臨しました。もはや、この国に何の希望も見出せないと感じた彼は、親兄弟を残し、ひとり韓国へと渡りました。国境警備隊の追撃の中、命からがら逃げ、長い旅路の末、大韓民国に到着しました。彼はこの国に順応することよりも、故郷の人々を独裁国家から脱出させようと躍起になりました。恐れ知らずのドンヒョクは、再び中国や北朝鮮に潜入し、さまよう多くの脱北者たちを韓国に引き渡しました。彼自ら豆満江に入り、川を渡ろうとする人々の手を取り助けました。

韓国での彼は事業に専念し、その儲けのほとんどを北朝鮮の家族や友人たちに送金し、韓国に定住するある脱北母子家庭を経済的に支援し続けました。また、彼は北朝鮮での反人道的行為の数々を国際社会に広く知らせました。2017年に文在寅政権が発足し、金政権と同調する韓国政権にも嫌気がさしたドンヒョクは、これまでの生業を全て手放しました。ソウルの中心街にある光化門政府庁舎前でテントを張り、ホームレス生活をしながら闘争に明け暮れるようになりました。彼は捨て身の覚悟で、10日以上に及ぶハンストや自らの体にガソリンをかけて火を放とうとし、必死で韓国政権に異議を訴えました。ドンヒョクのこのような激しさの背後にはいつも、故郷の人々へのまっすぐな愛と正義を貫こうとする姿がありました。しかし、怒りに身をまかせ、破天荒に生き、まるで暴れ狂う跳ね馬のような自分を誰一人止める者はなく、もはや自分自身でさえも制御できませんでした。 

とりなし続けて下さっている主

そんなドンヒョクを案じ、他の脱北者たちは以前から彼のために祈り続けていました。ドンヒョクはそれまで教会に出席したことがあっても、礼拝中の彼は決まって眠りに落ちていました。ある日、その脱北者たちのところにドンヒョクがやって来ました。その時、聖霊はその祈りの戦士たちに、今こそドンヒョクに福音を語れと示されました。彼らのこれまでのとりなしの祈りが満ちた時、ドンヒョクの心の扉がついに開かれました。いつも怒りに翻弄され、激しく生きてきた自分とは対照的に、神の御子なる方はどんなに不条理な苦しみに遭わされようとも、最期まで黙って十字架の道まで従い通されました。それはただドンヒョクへの愛ゆえ、彼の全ての罪のためにその身を捧げ尽くして下さいました。そのことを教えられたドンヒョクは、涙と叫びを持って悔い改めました。それは彼をずっと見つめておられたイエス様の瞳に、彼がようやく自分の瞳を合わせた瞬間でした。

十字架の愛を抱いて生きるようになったドンヒョクの顔は穏やかで、その瞳は愛に輝き、多くの活動家たちが彼の変貌ぶりに驚きを隠せませんでした。 ゲラサ人の男性はイエス様に出会い、変えられた喜びに溢れ、デカポリスの10都市にその恵みの奇跡を宣べ伝えていきました。チョウ・ドンヒョクもまた、同じ喜びを大韓民国や故郷北朝鮮だけでなく、地の果てまでも福音を宣べ伝えることを志す宣教師として生きています。神の御子なるイエス様にとって、救いが不可能なたましいは、この世に一人といません。イエス様は誰のことも諦めずに、今日も一人ひとりのために釘で打たれたその両手を広げ、御父なるお方に、私たち全人類のためにとりなし続けて下さっておられます。主イエス・キリストが決して一人の魂を諦めないのであれば、神のしもべである私たちが誰かの救いを諦め、祈りを止める理由がどこにあるというのでしょうか。 

神は、すべての人が救われて、真理を知るようになるのを望んでおられます。(1テモテ2:4) 

(名前は仮名です)(次号につづく)

軍備に進む北朝鮮

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