北朝鮮からの叫び(1)

朝鮮民主主義人民共和国(通称、北朝鮮)は今、世界で最も緊張度が高い国です。朝鮮半島は38度線により南北に分断され、北朝鮮は人口は約2,537万人です。首都は平城、国家最高指導者は金正恩朝鮮人民軍最高司令官です。現在、信仰の自由は大きく制限され、クリスチャンに対し世界で最も迫害度の高い国となっています。かつて東洋のエルサレムと呼ばれた平城や他の町には、神を信じる多数の聖徒がいます。そして信仰の非常な戦いを強いられています。

北朝鮮の聖徒

北朝鮮では、1万2千人のプロテスタント信者と、約800人のカトリック信者がいると公式発表されています。しかし、その数字を信じる人は誰もいないでしょう。推定ですが、プロテスタントだけでも約40万人から45万人はいる聖徒は、地下教会の聖徒たちです。その中には神の不思議な導きで、脱北に成功した聖徒もいます。また脱北が発見され、逮捕、強制送還、そして拷問を受けた聖徒たちも多数います。彼らは北朝鮮の実態を知っている生き証人です。

このほど、「ミッション・宣教の声」はクリスチャン脱北者に単独インタビューする機会が与えられました。北朝鮮の現状は、かつてのソ連・東欧の域を超えていると思われます。かつてレーニン、スターリンなどの独裁者によって、数知れない人々が無残に処刑され、シベリアの強制労働収容所に送られました。その実態は、この世のどんな書物も書き記すことはできない、と言われます。しかし今、北朝鮮で起こっている現実はそれ以上であると言われます。これから「ミッション・宣教の声」は、北朝鮮の聖徒たちの現状をお知らせします。ただし、私たちには政治的意図は全く皆無で、困窮する聖徒たちへの信仰と人道上の支援をすることを明言します。

北朝鮮国民が隣国中国へ査証なしで渡れば、厳しい厳罰が処せられます。中には、命を落とす脱北者もいます。長年つづく食料難から、北朝鮮から中国へ出稼ぎ労働者がいます。彼らは食料やお金を家族へ届けるのが目的ですが、彼らの収入は国の外貨獲得源であり、手取り額は極少です。

そのような情勢下で、生きることが精いっぱいの国民は厳しい戦いの下にあります。生活苦の戦いだけでなく、人権と信仰の自由はありません。独裁国家政策に従わない者は、容赦なく逮捕され投獄されます。現在、分かっているだけで北朝鮮には、6つの大収容所と約200の小収容所があります。囚人数は推定で約20万人、その約半数はクリスチャンと言われます。人権と人命が全く無視される北朝鮮では、西側とは別世界です。読者の皆様にこの現状を知っていただきたく願います。

中国国境近く

北朝鮮に接する中国国境側には、多数の朝鮮族の人々が住んでいます。彼らは朝鮮語を話し、朝鮮文化を持つ共同体を形成しています。そこに一旦入れば、自分たちの母国語で会話ができ、日常生活ができます。しかし、そこに入るためにはブローカーの手を借りなければなりません。悪徳ブローカーに騙され、大変な被害にあった北朝鮮人たちが多くいます。彼らは現在も表に出ることができず、苦汁を強いられています。

そのような朝鮮族共同体の内部に入り、支援、救出、そして伝道しているキリスト教宣教師たちがいます。じつは脱北成功者の大多数が、西側の教会と宣教師たちの助けによるもので、脱北後彼らの多くがキリスト・イエスの信仰に導かれています。脱北者も救出する側も命がけで、中途半端ではありません。救出側の一連の働きは、忍耐、知恵、隣人愛、そして何よりも多くの祈りと捧げものがなければ、決して続けられるものではありません。神がお許しくださる尊い働きです。

中国国境側のA町の韓国系中国人であるハン・チュング・イェル牧師(49歳)は、会員数600人の教会で牧会しつつ、脱北者支援を行っていました。北朝鮮脱北者に衣料品、食料品、医薬品等を提供し、多大な援助をしていました。しかし彼は2016年4月30日、無残にも殺害されました。これは脱北者支援をする者への警告でした。この事件が起こって以来、北朝鮮側国境の警戒体制が一層厳重になりました。24時間体制の監視カメラで日夜見張られ、脱北者は許さない姿勢を見せています。しかし、このような厳しい政治体制の下でも、成功した脱北者への人道上の支援は続けられています。

強制送還された脱北者

脱北に成功し中国側の朝鮮族共同体居住区に入った人たちは、神の守りの中にありますが、脱北直前に発見されたり、一旦中国側に入った脱北者が発見されれば、問答無用で強制送還です。彼らは例外なく収容所に入れられ拷問を受け、日夜にわたり主体思想(チュチェ思想)による精神教育が施されます。主体思想とは、北朝鮮及び朝鮮労働党の政治思想です。多くの人々が身も精神もボロボロになってしまうと言われます。私たちは創造神の存在を否定する社会の恐ろしさを、決して忘れてはいけません。

ところで、北朝鮮の聖徒たちはどのような信仰生活を送っているのでしょうか。神学教育、聖書教育が施され、信仰書籍が十分あるわけでもありません。しかし、彼らは生ける神を素直な信仰で信じています。そこに神は働いておられます。どうぞ、苦しみの下にある聖徒を祈り覚えてください。彼らは今、西側の兄弟姉妹の祈りと支援を必要としています。北朝鮮の聖徒と教会に重荷を持つよう導かれたら、ぜひお祈りくださり「北朝鮮支援」と明示して献金によるご支援をお願いします。(つづく)

「牢につながれている人々を、自分も牢にいる気持ちで思いやり、また、自分も肉体を持っているのですから、苦しめられている人々を思いやりなさい。」        (へブル13・3)